2014年7月4日金曜日

岩手を旅して大きくなる⑦―陸前高田、今を生きる―

陸前高田の中心部は、東日本大震災で起きた大津波で壊滅した。
多くの人々が亡くなり、生き残った方々も、家を失い職を失い、大切な人々を失くした。

希望。

そんなに簡単には手に入らないもの。
そんなに簡単には持ち続けられないもの。
悲しみはそんなに簡単に乗り越えられない、乗り越えた"ふり"でもいいのではないか。
絶望からはそんなに簡単に乗り越えられない、乗り越えた"ふり"でもいいのではないか。
希望の灯りが、消えませんように。


家も職も、それまでの日常を失った方々が、徐々に立ち上がっていることを、メディアを通じて情報が入る。
それならば、旅という形で、一消費者になりたい。
1泊だけだが、陸前高田に旅人として、身を置かせてもらった。


陸前高田での夜ごはんは、"復興商店街"でと決めていた。

本日の宿の"キャピタルホテル1000"の支配人の人首さんが、それならと、手作りmapと"たかたび"という岩手大学の学生達が作ったガイドブックを貸してくれた。
以前、無料で配布されていたそのガイドブック、すてきな内容だった。
今後のために私達も欲しいと思ったのだが、もう在庫はないそうだ。


支配人さんが、「それぞれが大きなお店ではないし、開いているか確認をしてから行った方がいい」と、検討したお店を予約してくれた。




Goedに、三陸の海の幸を食べさせたいこともあり、"未来商店街"の"鶴亀鮨"に決定!!

強面が第一印象の大将だけど、気さくで低姿勢というギャップ。
外観はプレハブだけど、テーブルに美味しく新鮮な鮨が乗って、笑顔と会話が飛び交えば、それでもう、上等な器も華美な内装も必要なし!!

大将は、一度は盛岡に移り住んだものの、地元の周囲の人々に後押しされ、陸前高田に戻ってきたのだそう。

大震災の語り部もするという。
震災のことをきちんと伝えたい、遠くから陸前高田に来てくれた人に、一度だけでなく何度も足を運んでもらいたいという。

私、大将に、「陸前高田に来たくって、息子の3歳記念旅行に、横浜からやって来ました。そしてここでお鮨を食べてます。また来たいです」って、伝えるべきだった。






鶴亀鮨さんを後にして、明日のための仏花を手に入れるために、スーパーに寄って、ホテルに帰った。
元は陸前高田の中心部であろう、灯りもない更地の中を走り、高台に煌々と光るホテルを目指して、車を走らせる。

ホテルの中に入ると、ホッと一安心する。

そして支配人の人首さんが声をかけてくれた。
「おかえりなさい、お鮨、どうでしたか!!」

部屋に入った。
「あーっ!!」Goedが叫んでる。
「あーっ!!」Satocchiと私も、Goedに続く。

バースデープレートと
メッセージカード!!

チェックインの時に、ホテルを新聞で知ったこと、息子の誕生日記念に被災地を知るために来たと、確かに人首さんと会話した。


誕生日のこと、気にかけて下さったんだ!!
こんなに嬉しく素敵な想いができるだなんて…。


まずはお風呂に行ってからお祝いすることにして、フロントに寄った。
人首さんに心からお礼を言わせてもらった。

Goedは、2歳最後の夜に、"おもいやり"というものを頂いた。

散々お友達をド突き威嚇し泣かせてきた2歳のGoedだったけど、そんな2歳を、"おもいやり"で締めくくることができたね。





よかったね。

宴はたけなわ。

両親は、釜石の酒造、浜千鳥。
一緒に酒を飲める日は、法律上は、
あと18年と1日。

陸前高田の夜は更けてゆきます。





夜が明けて、Goed3歳の朝。
まずは朝ごはん。

このヨーグルト、旨い。
説明を読むと、あ、昨日スーパーで気になった巨大なヨーグルト!!

今日、探して買うっきゃない!!





隣の女性5人グループが、Goedにたくさん声をかけてくれる、明るい方々。
陸前高田育ちの4姉妹だそう。

昨日、このホテルであった結婚式に参列したそうだ。
長女のおばあさん、どうしてもその結婚式に来たくて、北海道から娘さんに連れてきてもらったと、嬉しそうに教えてくれた。
被災した自分の故郷に、震災後、初めて足を踏み入れたことも、教えてくれた。




部屋に戻り、実は昨日、私達が大船渡で買っておいたショートケーキと3歳のキャンドルで、朝から、誕生日お祝い。

この幸せ、私達は、噛みしめます。
今、生きて、笑い合えていることが有り難いことだと、感謝します。
窓の向こうには、自然の脅威、甚大な被害、たくさんの悲しみ、絶望と、それでも希望が、広がっている。




Satocchi、連れて来てくれてありがとう。
Goed、また一緒に来よう。
この窓からの景色が、少しでも、元の営みに戻っていますように。

Goedのために、ケーキとキャンドルを買ったこと、このホテルにお支払いをすること、昨日お鮨屋さんでお勘定したこと、ちっちゃな微々たる消費だけど、少しでも、お役に立てますように。



この朝、朝食会場でも、フロントでも、Goedはスタッフさんから、「お誕生日おめでとう」と声をかけられてた。
すばらしい引継ぎ。
こんなおもいやりが、私の中の、"陸前高田"を印象付ける。

ホテルのスタッフさんは、みなさんとても親切なうえに、物腰はCAかのよう。
すばらしい教育だ。


お部屋も、広々、清潔、シックでセンスがよく、快適そのもの。



すてきな思い出と、快適な睡眠と、美味しい朝ごはんをありがとうございました。
そして、大津波が襲ってきた海に向かった大きな窓のお陰で、今までの惨状と、進む復興を目に焼き付けることができました。

また、来ますね。
忘れません。


ホテルを後にして、車を走らせる。
まずは、Satocchiが行きたい場所、明治38年創業の、"神田葡萄園"。

中に入ると、みなさん、明るい笑顔で迎えてくれる。
試飲をさせてくれたり、Goedをかまってくれたり、あったかい。

Satocchiは、マスカットサイダーに興味津々。
それから私の好きな甘いワイン、ナイアガラ品種の白ワインも、目を付けてくれてた。


←この写真の左上のラインは、津波の浸水ラインだそうだ。
海から1km以上入った場所だが、この高さだ。
甚大な被害を受けたそうだ、葡萄も海水を被ったわけだし…。

色々購入させてもらって、宅配依頼。
Goedにはりんごゼリーをね。

「うちにも3歳半の娘がいるんですよ」と、スタッフの女性の方がお話してくれた。
その方のインタビュー記事を見つけた(ココ)。




"奇跡の一本松"の駐車場の前にある"やぎさわcafe"。
瓦礫が片づけられた荒涼とした場所に、元気の出る看板にホッとする。

"八木沢商店"は、1807年創業の醤油や味噌の店。
大震災で壊滅したものの、他県の醸造所に製造を委託するなどして、経営を持続。
3年を待たずして、自社工場による製造が復活。

元気なおじさんも、おりました。
Goed、たくさん遊んでもらって、元気と元気がぶつかりあって、元気百倍になりました。


お昼ご飯は、復興商店街にて。
夕べ訪れた未来商店街とは別の、"つどいの丘商店街"。

ここにも元気、ありました。
誰がどう見ても元気になるオブジェ。

Goedもこうなる。



13の、飲食店や洋品店や塾や子育てサロンなどが集まっている。
子供からお年寄りまで、ここに来れば、何か元気がもらえるというコンセプト。



私達は、"陸丸"というお店でランチを取ることにした。








びっくらこいたよ、そのコストパフォーマンスに!!
安くて旨い、旨過ぎる!!
陸前高田に行ったら、また行きます。

陸丸丼450円。
豚しょうが丼420円。
すいとん150円。

陸丸丼というのは、味付けホルモンの丼なのだが、このホルモンが、絶品!!
"日益屋"さんのホルモンだって、説明があった。


生姜焼きも、どうしてこんなに美味しいの!!

すいとんも美味しくって、遠野で食べたひっつみといい、Goedも、この手の麺とお出汁、お気に召したご様子。


食後のカフェタイムを兼ねて、"りくカフェ"へ。

りくカフェとは…
「震災による被害はあまりにも大きく、まちを元に戻すという意味での復興には長い時間がかかります。
震災による心のダメージが癒えぬまま、仮設住宅での不自由な生活を続けている方も大勢おり、一方で人口流出も加速しています。

地域の人々が誇りに思える場所・力が湧き出る場所をつくることで、『陸前高田は新しく生まれ変わる』という希望を持ってもらいたい。
そんな思いで、自らも被災した地元の医師たち、地域の女性たち、建築・まちづくりの専門家たちが集まってNPO法人を設立し、新しい地域づくりを実践しています。」


両親はアイスコーヒー、Goedはアイスココアを頂きながら、スタッフの方々と談笑させて頂く。
談笑??
いえ、あれはGoedの一人舞台だったね。

床を叩いて笑い崩れている人→。


壁には一面のサイン。
読み取れる有名人が、坂本隆一さんやRAGFAIRさん。



有名人の方も有志の方も、ここでコンサートをしたり、打合せをしたり、単純に休んでいったり。
普段は、地元の方々が病院帰りにお迎えを待ったり、教室が開かれたり、移動販売が来たり、そんな憩いの場。

私達も、Goedの一人芝居で笑い、この後の打合せをしたり、美味しいコーヒーでしっかりと休ませてもらいました。

りくカフェオリジナルのアイスコーヒーボトルもしっかり買わせて頂きました。
ロゴもかわいくって、飲むのがもったいなく思っちゃうけど、美味しいうちに頂かなくっちゃ!!





さぁ、そろそろ一関へ向かう時間。
一関でレンタカーを返して、はやぶさに乗って、帰ります。
最後の最後に、一関でスーパーマーケットに寄り、あの美味しかったヨーグルトがあることを願う。
ありましたありました、岩泉ヨーグルト1kgパック!!
これが手に入りさえすれば、大満足。
それから、新幹線の中で食べる、夜ご飯もね。


一関の新幹線ホームの端っこの方へ行くと、他に人もなく、Goedの恰好の舞台となる。
振り付きで、『アナと雪の女王』を大熱唱。
ごめんなさい、他のお客様のお耳に入ってしまっていたら。
でも、ホームは音響がよくエコーが響き、Goedも気持ちよく歌う、いや、歌い切りさせてあげたくもなる。


Goedは黄色い線の内側にしっかり入りつつ身を乗り出して、今か今かとはやぶさを待つ。

まもなく電車が参ります♪

うん、来たようですな。

はやぶさに乗り込むと、早速我が家の宴会が始まります。
これが今宵の晩御飯。

たとえ大好きな憧れの"はやぶさ"と言えど、乗ってしまえば、新幹線。

それでも、「はやぶさにのったよ」という台詞が言えるようになりました。
よかったね。







こうして旅は終わった。
無事に家に帰ってこれた。
これが一番大事なこと。
おっきな経験と思い出を持って帰ってこれた。
これが二番目に大事なこと。

Goed、本日3歳になりました。
誕生日プレゼント第2弾は、トミカのANAの飛行機セットと、トミカのおでかけせんせい。


三陸旅行をブログに残すことが、我が家にとって、東北復興支援の一部だと思って、長々とだが、書いた。

キャピタルホテル1000の料理長の紺野拓郎さんの言葉が、我が家の旅行は間違いではなかったんだと思わせてくれた。
「料理人として、三陸の食材は非常にレベルが高いと、誇りを持っています。そのことは、実は震災後、ほかの町で暮らしたときに改めて気づかされたことでした。『観光気分で被災地に行けない』という思い、遠慮もあるかもしれませんが、我われもずっと『被災者』でいるのは嫌なので、ぜひ遊びに来ていただきたいですね」


今を生きている。
今を生きなければいけない。
できるなら、少しでも多くの笑顔と少しでも少ない苦痛と共に。
亡くなった方々も、もしも生きていたらそうしていたように。
当たり前と思いがちの、"生きている"ということを、当たり前と思わずに、感謝して。





4 件のコメント:

  1. ブログ読ませていただきました。
    震災はまだ、終わっていませんね。
    陸前高田の現状がまだまだですね!

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    1. コメントありがとうございました。
      被災者のみなさんの生活、気持ち、町の再生、前に前に一歩ずつ進めたらと願うばかりです。

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  2. Goed君3歳のお誕生日おめでとうございます!
    素敵なお誕生日になりましたね。

    数ヶ月前に「トリップトラップ」でヒットして以来いつも楽しみに読ませていただいています。
    私も7、4、0歳の子育て中でAkkoさんに共感すること多々。
    ここで知った情報で「とだこうしろう美術館」へも行ってみましたよ。
    いいところでした。
    本当はコメントを残すなんてこと、苦手なので今までしたことがなかったのですが今回の記事に感銘を受けてコメントしたくなりました。
    私は震災以来「東北」を遠ざけていました。
    理由は目に見えない脅威「放射能」がこわくて。
    だけど、Akkoさんの家族旅行を読み進めていくうちに何も知ろうとせずにただただ東北を避けている自分が恥ずかしくなりました。
    これから私はもっと東北に目を向けていくべきだと思いました。
    それと「生きていること」に感謝する気持ち、大切なことですね。

    長々と失礼しました。
    これからも投稿たのしみにしています。

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    1. 私もコメントするのも、コメントに返信するのも慣れなくて苦手なので、choccoさんのコメント、嬉しかったです。

      こんな私が書く文章でも、誰かと何かを共感できるだなんて、不思議な気分です。
      特に、「東北に目を向けること」「生きていることへの感謝」が共感できたことは、私にとっては感慨深いです。

      お子さん、3人なんですね!!
      忙しい中、コメントありがとうございました。

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