2014年3月30日日曜日

『TODAY』伊藤比呂美 訳, 下田昌克 絵

雑誌で見かけて気になってた『Today』。
意識し始めると、本屋さんに平積みになっていることに気が付き始めた。

気が付き始めたころには、私は既に、図書館に予約を入れていた。



予約していた本が、ようやく私の手元にやってきた。




訳者は"伊藤比呂美"さん。
友人の関口香さんが、ニュージーランドの子育て支援施設を訪れた際に、壁に貼ってあるこの詩を見つけ、伊藤さんに訳を依頼したそうな。

詠み人知らずの詩。
英語圏にはこのような、人を慰め励ます詠み人知らずの詩は、少なくないのだそう。

「いとうさん、これ訳せます?」
「かんたんかんたん」

と引き受けて送り返した訳が、どのように回り回ったのかはわからないが、インターネットで、日本の疲れた母達の底力に支えられて、ちまたに流布していった、とのこと。


伊藤さんもまた、育児経験者。
汚れた台所、散らかった居間、仕事と育児の狭間で焦る気持ち、子育てと夫の間で溺れかけた自分、体験していた。

子供を持つ前までは、きまじめで几帳面だったから、育児は、考えつめすぎて壁に当たっていたそう。
打開策として、「ずぼら、がさつ、ぐうたら」を呪文のように唱えていたら、楽になってきたそうだ。
「てきとうさ」、これが育児の極意だという。
これは、育児だけではなく、その後の人生にも役に立ったと。


そんな伊藤さんが訳した『TODAY』の詩は、こう綴られている…。


今日、わたしはお皿を洗わなかった
ベッドはぐちゃぐちゃ
浸けといたおむつは
だんだんくさくなってきた
きのうこぼした食べかすが
床の上からわたしを見ている
窓ガラスはよごれすぎてアートみたい
雨が降るまでこのままだとおもう


ひとに見られたら
なんていわれるか

ひどいねぇとか
だらしないとか
今日一日、
何をしていたの?
とか



わたしは、この子が眠るまで、おっぱいをやっていた
わたしは、この子が泣きやむまで、ずっとだっこしていた
わたしは、この子とかくれんぼした。
わたしは、この子のためにおもちゃを鳴らした、それはきゅうっと鳴った
わたしは、ぶらんこをゆすり、歌をうたった
わたしは、この子に、していいこととわるいことを、教えた


ほんとにいったい一日
何をしていたのかな

たいしたことはしなかったね
たぶん、
それはほんと



でもこう考えれば、いいんじゃない?

今日一日、わたしは
澄んだ目をした、髪のふわふわな、この子のために

すごく大切なことをしていたんだって。

そしてもし、そっちのほうがほんとなら、
わたしはちゃーんとやったわけだ。



泣けた。
「ひとに見られたらなんといわれるか」
「いったい一日なにをしてたのかな」
何度そう思ってきたことか。


寝不足なら子供がお昼寝した時に一緒に寝ちゃいなさいとか、家事なんか一日しなくても死にゃしないってよく言われた。

でもさ。
子供が寝た時に、ちょっと、溜めてた録画を観ちゃダメ?
子供が寝ているから、溜まったメールに返信したり、気になってたことネットサーフィン、したい。
子供が寝ている間に、あったかい湯気のたったカフェオレを、ボーっとしながら飲みたい。
そんな、なんてことはないことさえ、子供が起きてると難しい時期ってあるんだよね。

子供が起きると、片づけた先から汚され、料理をしているとそばに来いと泣き叫ばれて火を止めさせられ、静かだなぁと思った時は大抵いらんことをしているし、添い寝から外れようとすれば気づかれ泣かれ振り出しに戻り、夜泣きで何度も起こされ。

これが24時間毎日、問題は新たに新たに次から次へと、消えては湧き消えては湧き。
そんな謀殺された日々でも、時間があったら、自分の時間を見つけたい。
寝る時間を惜しんで自分時間を作りだしてたら、お掃除するの、後回しにしちゃ、だめかな。


何を言っても、自分でも言い訳に聞こえるわ。
うしろめたさと願望の狭間であります。
弱いよなぁ、私。


でも、遠いニュージーランドの母親達が共感し多くの人々が励まされているというこの詩を知り、私がそう感じたことは、私がとりわけ駄目な人間だからじゃないのかもって思えて、勝手に救われた気分。


さぁ、明日からがんばろう。
もうちょっと、段取り良く過ごしてみよう。
明日こそは、時間を作って窓ふきを敢行しよう。
わかってる。
洗い物もそのままにしちゃいけないって。
おむつもつけっぱなしにしちゃいけないって。(Goedは1歳半位まで布おむつだったので)
言い訳を少しずつなくしていこう。


洗い物を放置してもいいじゃない。
でも、昨日よりも少し早めに洗い物に取り掛かれたらいいな。
昨日よりも少し範囲を広げて、部屋を片付けられたいいな。
育児が忙しいことに甘んじることなく、昨日よりもちょっぴり、うまいことやってみようって、この詩を読んで、私は思った。








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